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選手インタビュー

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田中 利幸-Toshiyuki TANAKA- 選手

3日間を走りきる達成感が総合馬術の魅力

2012年ロンドンオリンピック出場、2014年仁川アジア大会で団体銀メダル・個人5位の成績を残し、日本を代表する選手の一人となった田中選手。ロンドンの前年よりイギリスに拠点を移し、数々の国際大会で腕を磨きつづけ、2017年にはCCI3* Bramhamで4位入賞の快挙を遂げるなど、近年著しい成長を見せています。

トップライダーに交じっての入賞は嬉しかった

6月のCCI3*※ Bramham4位入賞は、優勝した大岩選手の活躍とともに、日本の馬術界にとって大きな一歩となりました。初出場にして完走したロンドンオリンピックと合わせて、2つの大会を振り返ってもらいました。

※各大会の競技レベルは「スター」であらわされ、数字が大きいほど上位の大会となる。

Bramham出場前は、春からコンスタントに競技会をこなして、馬がベストな状態になるよう持っていきました。初日の馬場に2、3カ所ミスをしたのですが、その後のクロスカントリーはタイム減点0.4と、自分でも驚く結果でした。それでもトップライダーも参加している大会なので、最後の最後まで気を抜かず、障害をタイム減点1と満足のいく内容で終え、4位入賞が決まった時は本当に嬉しかったです。
ロンドンは出場権を獲得するまでに、いくつもの試合をすべて取りこぼさずクリアしなければならない厳しいスケジュールで、決まった時は嬉しいの一言でした。出場が決まってからは、馬のコンディションを整えるため、大会には出場せず自主トレーニングを重ねました。騎乗したマーキードプレスコは人なつこい馬で、ミスした部分をかばってくれたりと、とても助けられました。当時は日本代表の中で自分が一番未熟だという自覚があったので、とにかくベストを尽くすことだけを考えていて、終わった時、ほっとしたことを覚えています。

総合馬術大国イギリスでの経験

日本で活躍した後、2011年に渡英した田中選手。毎日練習と大会の日々を過ごし、「休みがないんです」と笑いながら語ります。生活スタイルや、イギリスでの経験がもたらした転機など、どのような変化があったのでしょうか。

イギリスに来てからライフスタイルはずいぶん変わりました。日本ではレッスンを受け持ったりと、練習は限られた時間しかできなかったのですが、今はパートナーの馬の世話と騎乗技術の練習が生活の中心です。イギリスは総合馬術が盛んで大会も多く、下のほうのクラスでもトップライダーが出場することがあるので、見ていて勉強になります。人の経験、馬の成長にとてもいい環境だというのはもちろん、過ごしやすい気候なのもありがたいですね。オフは1日もありませんが、選手として充実して毎日楽しいです。
そんな中、転機となったのはリオの団体枠予選での敗退です。結局その後、個人枠も取ることができず、その時は悔しさでいっぱいになりました。それ以来、馬だけでなく自分自身の筋力トレーニングにも取り組んでいます。特にクロスカントリーはハードな競技なので、後半に引っ張りきれなかったり、試合後も筋肉痛になることがあったりと、人の体力も問われますから。
それに、敗退してからは心境の変化も大きかったですね。あの時敗れたことが、今の自分につながっているというのは、実感としてあります。

人馬一体という喜び

15歳の時、テレビで見た競技会の映像をきっかけに馬術をはじめたという田中選手。世界の第一線で活躍するようになった現在では、馬術の魅力をどのように感じているのでしょうか。また、日本の若い選手へのアドバイスもうかがいました。

総合馬術について言えば、難しいのは3種目すべてこなせないといけないところです。現在パートナーの馬は5頭いるのですが、人と同様、馬も得意不得意があるので互いにカバーしたり、トレーニングも基本の練習プランは同じでも、苦手な種目をそれぞれ強化したりと工夫しています。
一方で魅力はクロスカントリーがあることですね。純粋に見ていて面白いですし、3日間を終えゴールを切った時の達成感は言いあらわせないものがあります。
また馬術全体の魅力は、馬の気持ちを感じながら競技していくことです。動物と一緒に行うスポーツは馬術だけですから。気持ちを読み取ったり、競技を終えた後はしっかりケアをして、大変ですがそうした人馬一体とも言える関係が、他にはない魅力だと感じています。
アドバイスと言えるかわかりませんが、馬術は経験の競技なので、数をこなすことが成長に直結します。あとはトップライダーの映像を見てイメージすることも大切です。

最初の目標、2018年

2020年に開催される東京オリンピック。その出場資格獲得に向けて、さらには大会での上位入賞・メダルを目指したトレーニングが、すでにはじまっています。56年ぶりの自国での夏季オリンピックに向けてのプラン・意気込みをうかがいました。

2018年には世界選手権があり、BramhamでMER(出場最低資格)を取得できたので、まずはそこが目標です。コースデザイナーが東京オリンピックと同じ方なので、コースの特性をつかむ意味でも重要な大会になります。その翌年から東京のMERの対象となる大会がはじまるので、馬のコンディションを見つつ、オリンピック出場資格を得られるようがんばります。
自分自身、イギリスでトップライダーと競う経験をさせていただく中で、選手として感覚が鋭くなっている実感があります。またBramhamという伝統ある大会、タフなコースで入賞できたことは、自信にもつながりました。東京はやはり自国開催なので出場したい思いが強いですし、出られるならいい成績を残し、メダルを目指していきたいと思っています。

田中 利幸-Toshiyuki TANAKA- (たなか としゆき)

田中 利幸-Toshiyuki TANAKA- (たなか としゆき)

日本経済大学卒業。乗馬クラブクレイン所属。ナショナルチーム選手。11年 国民体育大会 馬術青年男子 総合 優勝、CIC 2スター Tokyo優勝、全日本総合馬術大会 CNC 3スター/CIC 1スター Miki 2位。12年 ロンドンオリンピック出場。14年 仁川アジア大会 団体銀メダル 個人5位。17年CCI 3スター Bramham 4位。