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選手インタビュー

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北島 隆三-Ryuzo KITAJIMA- 選手

東京に向けて、みんなが動いている

明治大学馬術部時代は主将を務め、全日本学生大会14連覇に貢献した北島選手。2014年仁川アジア大会で団体銀メダル・個人6位、2016年リオデジャネイロオリンピック出場と、世界をフィールドに活躍しています。2015年からはイギリスに拠点を移し、現在は2020年の東京オリンピックを視野に入れた活動を行っています。

リオより緊張した仁川アジア大会

2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、ホースインスペクション(馬体検査)により棄権したものの、初出場ながらクロスカントリーまで進出。団体銀・個人6位を獲得した2014年の仁川アジア大会とともに、2つの大会を振り返ってもらいました。

2015年の1月に馬と一緒にイギリスに渡り、その春先からリオの代表選考がスタートしました。渡英直後ということや自身のレベルを考慮して、夏過ぎまで大きな大会には出ず、1スター※1を中心にできることに専念しました。ポイント※2を意識したのは終盤くらいで、大会に出るだけで精一杯だったので、よく出場権を取れたなというのが本音です。
リオ本番では思っていたよりも平常心を保て、コントロールの範囲内でできたように思います。ただコースの難易度が高く戸惑いはありましたね。そんな中でもクラシック常連の選手がオリンピックでも活躍しているのを見て、安定した強さを感じました。
仁川については、はじめての日本代表としての出場だったので、正直リオよりずっと緊張しました。ただ、いざ騎乗すると馬の調子を見ることで落ち着き、ベストと思える演技で終えられました。
結果、団体銀・個人6位をいただき、それはもちろん嬉しかったのですが、イギリスでの経験を経て振り返ると、やはりあの時は団体金を取るべきだったし、個人でもメダルを狙っておかしくなかった。もっとがんばれたのではとも思います。

※1:各大会の競技レベルは「スター」であらわされ、数字が大きいほど上位の大会となる。
※2:オリンピックの出場権利は、アジア・オセアニア地区での国別対抗戦での上位か、各国際大会の成績により加算されるポイントで行われる。

イギリスで戦うということ

アジア大会での好成績をきっかけに、オリンピックを視野に入れた渡英を所属クラブから勧められ、イギリス行きを決断した北島選手。「小さいころからの夢。今かなっているのは幸せ」と語る新天地での競技生活とは。

小さいころから映像でイギリスの試合を見ていたので、渡英を持ちかけられた時はとにかく嬉しかったです。馬術はこちらではメジャースポーツなので、選手、観客、試合の数すべて日本とは桁が違いますし、総合馬術が盛んで、馬場や障害の選手も総合経験者がほとんどなんです。海外から来る選手も多く、国内外のトップライダーと待機場で一緒になったりと、恵まれた環境にいることを実感しています。
とはいえ最初のころは競技環境の違いに慣れておらず、苦い経験もありました。はじめて挑戦したインターナショナルのことですが、静かで客席の遠い日本の競技場との違いに馬が驚き、暴れてしまったんです。人馬ともに環境に慣れていなかった、知らなさすぎたことが原因でした。
そこから、イギリスで競技するということをあらためて考え、心構えや準備が大きく変わりました。その失敗があるからこその今だと思いますし、忘れられない試合ですね。

野外の前は走りたくてそわそわする

日本にいた当時から障害を得意とし、今も3種目の中では最大の強みとしている北島選手。しかし総合馬術の最大の魅力は野外(クロスカントリー)と言います。その理由や、トップライダーに囲まれる日々で感じた、総合馬術の難しさをうかがいました。

総合馬術の魅力はやはり野外です。間近で見る迫力はすごいですし、足音だけとっても他の競技との違いがわかります。選手としてもアドレナリンが出ると言いますか、野外の前は早く走りたくてそわそわしますね。
また、年に1、2回あるかないかなのですが、自分の思いに馬が応えてくれる瞬間というのがあります。人馬一体とよく言いますが、そうした感覚も馬術の魅力だと思います。
一方で総合の難しさは3種目をひとつも欠けることなく、3日間走りきらなければならないことです。自身のレベルを周囲のトップライダーと比較すると、スタジアムジャンプでは負けていないと思うのですが、野外と馬場はまだまだ届いていない。得意不得意は他の選手ももちろんあるのですが、たとえば現在世界ランク1位のミヒャエル・ユング選手は不得意種目がない。そういう選手ほど上位にいるのは事実ですし、やはりそれが理想です。

東京のために、今走っておかないと

56年ぶりの自国開催、さらに今回から馬術の出場枠が4人から3人に変更されるなど、代表権を巡る激しい競争が予想される東京オリンピック。人だけでなく馬の力も問われるこの競技にどのように挑んでいくのでしょうか。

現在のパートナーは4頭で、仁川・リオを走ったジャストチョコレート以外は新しい馬がほとんどです。リオの直後から東京を見据えて用意してもらい、所属クラブにはとても感謝しています。今は大会をこなしながら、少しずつどんな馬なのか把握してきた感じです。東京へ向けた準備はすでにはじまっていますから、今走っておかないと。
リオでも感じたのですが、やはり強い人は安定して強い。普段同じ試合に出ていても、経験の差を肌で感じます。でも、そこにたどり着けないと東京でいい結果は出せない。コンスタントに成績を残し、人馬のレベルを上げることが一番の近道だと思います。
開催地が東京に決まってからは、日馬連もJRAも所属クラブも、みんな盛り上げていこうと動いているのを感じます。普段、なかなか自分から発信することもないので、総合馬術の活躍を取り上げてもらえると選手冥利に尽きますし、一人で戦っているわけじゃないことを実感します。3年後、その流れの中に自分がいられるよう、東京で輝いている自分を想像しながら、毎日こつこつがんばっていこうと思います。

北島 隆三-Ryuzo KITAJIMA- (きたじま りゅうぞう)

北島 隆三-Ryuzo KITAJIMA- (きたじま りゅうぞう)

明治大学卒業。乗馬クラブクレイン所属。ナショナルチーム選手。13年 全日本総合馬術大会 選手権競技 2位。14年 CIC 1スター Tokyo 優勝、CCI 1スター Miki2位。仁川アジア大会 団体銀メダル 個人6位。16年 リオデジャネイロオリンピック出場。