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ローラン・ブスケ氏

馬術はライダーと馬とのチームスポーツ

2016年より日本馬術連盟 総合馬術シニアマネージャーに就任したローラン・ブスケ氏。
元フランス代表チーム選手として活躍するとともに、各国のトレーナーを30年にわたって歴任した豊富な指導キャリアを有しています。
2020年の東京オリンピックを見据えた氏のビジョンを伺いました。

日本との長い付き合い

ブスケ氏と日本との関わりは長く、アトランタ・シドニーオリンピックの日本代表選手 細野茂之氏(現 日本馬術連盟総合馬術本部 本部長)のフランス留学時のトレーナーでもありました。
そして2016年には総合馬術シニアマネージャーに就任したブスケ氏の日本への思いを伺いました。

今回の就任のずっと以前から日本の選手とは一緒にトレーニングを行っていて、もうかれこれ25年以上になるかと思います。いい思い出ばかりで、どれが一番と順位をつけることもできないくらい。いい結果のときも、そうでないときも、長く一緒にやってきて、今に至るまで良好な関係が続いているというのはとても嬉しいですね。
現在はシニアマネージャーとして日本の選手、日本馬術連盟との関係も良い形で構築できていると感じていますし、特に細野本部長とはヴィッテル※で団体金を取るという最高の思い出も共にするなど、古くから親しくさせていただいています。ですのでこうして一緒に働けることが嬉しく、とてもエンジョイしています。
今後ともこの関係を大切にしていきたいですね。

※ヴィッテル国際総合馬術大会(フランス)。細野氏は平成12年の同大会で団体金・個人4位を獲得。ブスケ氏はそのトレーナーを務めた。

ライダーの感覚をシェアすることが大事

現在、シニアマネージャーとして日本の総合馬術チームを支えるブスケ氏。
このシニアマネージャーの役割とはどういうものなのか、またフランス代表チームの元トレーナーでもあり、豊富な指導キャリアを持つ氏がトレーニングで重視している点について伺いました。

私の役割は一言で言えば、チームの中心からさまざまなことをオーガナイズ(全体をまとめる)することです。
選手それぞれの課題や疑問、競技のスケジュールを把握して、チームが最高の状態になるように調整しています。また連盟、監督、選手、トレーナーそれぞれの関係を円滑にするつなぎ役でもあるため、一歩下がったところから全体を眺め、明確なビジョンが見えるように意識しています。
トレーニングで重視している点はライダーの感覚をシェアすること。
どんな気持ちなのか、どのような考えを持っているのか、さまざまな意見を交換する中で指導内容を決めていきます。
優れた選手はプロとして自身の考えや感覚を持っていますから、そこをまず理解し、その上で最良な方法を一緒に考えるプロセスを大切にしています。
そしてもう一つ、近年特に重視しているのがライダーと馬のコンビネーションです。テクニックももちろん必要ですが、人馬のコンビネーションを構築することで、互いの信頼を育むことが非常に大切です。
本物の関係性というものが自信につながり、やがて驚くような結果をもたらしてくれるのです。

東京オリンピックへの道程

2019年には東京オリンピックのクオリファイ※競技がはじまり、本格的にオリンピック出場権を巡る選考がスタートします。
そのため2018年までの活動がその後を大きく左右します。
今後の鍵となるナショナルチームの施策について伺いました。

2017年は馬とのコンビネーションの経験を積むこと、そしてチームスピリットを育てることを重視してトレーニングしています。
いいチームというのはいいチームスピリットを持っているものですし、それが選手個々の力にも影響を与えます。選手、監督、トレーナー、シニアマネージャー、獣医が協働してチームを作り上げて戦うこと、それが2017年の目標です。
2018年はアジア大会、WEG(世界選手権)と2つの大きな大会があり、それぞれに目標を設定しています。まずアジア大会では、若手選手にチーム戦のキャリアを積んでもらおうと考えています。過去の実績からいっても、アジア大会は非常にいい結果を残していますから、そこに続きたいですね。
WEGについては、トップレベルの大会の中で、今までトレーニングしてきたことがどんな場面で、どのように発揮できるかを学ぶ絶好のチャンスだと考えています。もちろんベストを尽くすのは当然ですが、私たちの最終目標は2020年ですから、改善点を学ぶための最高のテストとして位置づけています。

※オリンピック出場権利を得るための審査。アジア・オセアニア地区での国別対抗戦での上位か、各国際大会の成績により加算されるポイントによって権利が付与される。

目標はチームとしてのメダルを獲得すること

リオオリンピック後に始動したナショナルチーム。
早くも海外合宿などで成果を挙げはじめ、ヨーロッパで活動する選手を中心に大きな成果も見られる中、ブスケ氏は「今の私たちは冷静ではない。
長期的なビジョンから段階を踏むことが必要」と語ります。

東京オリンピックの目標はチームとしてのメダルを獲得すること。これは明確な目標です。
2017年はいいスタートが切れて手ごたえを感じる機会が多く、「いいチームですね」と言っていただくこともあります。もちろん今の結果にはある程度満足していますが、あと3年ありますから、冷静に物事を進めていかなければなりません。たとえアジア大会やWEGでミスをしたとしても、それを糧に2020年の結果につないでいくことが肝心です。現時点の成果で判断せず、真面目に段階を踏んでいくことを大切にしたいと思っています。
馬術は個人競技ではなくライダーと馬、2つの生きものによるチームスポーツです。たとえるなら、同じ船に乗り、同じ港という目標に向かうチーム。ですのでホースマンシップの大切さについても、意識して伝えるようにしています。
東京オリンピックはすばらしい目標であり、同時にとてつもない目標です。
2020年まであと3年、その日が来ることを楽しみに、最高のチームを作りあげていきたいと思います。

ローラン・ブスケ (Laurent Bousquet)

ローラン・ブスケ (Laurent Bousquet)

元フランス代表チーム選手。1982年~2007年まで国際選手として活躍。
競技と並行して1987年よりフランス、日本、ベルギー選手のトレーナーを歴任。
2010年~2013年 フランス代表チームトレーナー。
2016年より日本馬術連盟 総合馬術シニアマネージャーに就任。